2018年2月19日月曜日

■生駒市立病院 地域全体で褥瘡対策 第2回褥瘡フォーラム開催

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2018年(平成30年)2月19日 月曜日 徳洲新聞 NO.1121 四面

生駒市立病院
地域全体で褥瘡対策
第2回褥瘡フォーラム開催

生駒市立病院(奈良県)は同院講堂で第2回褥瘡(じょくそう)フォーラムを開催した。これは近隣の主に医療・介護関係者らを対象とした褥瘡ケア勉強会で、予防法やケア法を広め、地域の褥瘡患者さんを減らすのが狙い。褥瘡は高齢者ケア・介護の現場では珍しくなく、痛みをともない悪化すると生命に危険が及ぶこともあることから、適時的確なケアが必須。第1回フォーラムが座学中心であったことをふまえ、今回は予防・ケアの実際を、参集した66人が体験学習した。

最新の予防・ケア方法を指南

「重症な褥瘡患者さんを地域から少しでも減らしたい」と中西部長 「重症な褥瘡患者さんを地域から少しでも減らしたい」と中西部長
生駒病院では中西新・形成外科部長と中務直美看護師(皮膚・排泄(はいせつ)ケア認定看護師)が中心となり、褥瘡の治療・ケアに注力している。

しかし、患者さんのQOL(生活の質)を考えると「そもそも発生させない、重症化させないことが大切です」と中西部長。近隣の医療・介護関係者らに褥瘡ケアの最新の知見を伝える手段として褥瘡フォーラムを企画し、2017年1月に第1回を開催、11月に2回目を開催した。

同フォーラムは専門的な内容を含むものの、一般の方にも門戸を開いており、今回は在宅介護を学ぶ家族も参加。

まず褥瘡ケアに関する小テストを実施し、その答えをなぞるように、中西部長が「褥瘡ケア」、栄養科職員が「栄養評価と補助食品」、中務看護師らが「褥瘡の発見とオムツ装着法」、リハビリテーションスタッフが「ベッド上と車いすのポジショニング」を、それぞれ指導した。

褥瘡の模型を用いて褥瘡の評価法やケア方法を指南 褥瘡の模型を用いて褥瘡の評価法やケア方法を指南
中西部長は褥瘡治療・ケアにかかわる医療者の共通言語として褥瘡経過評価スケール「DESIGN R(デザインアール)」(褥瘡の大きさや浸出液の量など褥瘡の深さ以外で重症度を評価するスケール)を紹介。患者さんを他病医院に送る際は、同スケールを用いた情報提供があると連携がスムーズと訴えた。

具体的なケア法としては、褥瘡部位洗浄の際、生理食塩水を使うべきか否かという質問がよく上がることに触れ、「日本の水道水は清潔ですから、生理食塩水である必要はありません。費用を気にして生理食塩水を少量使うより、水道水でしっかり洗ってください」(中西部長)。また、水のいらない洗浄剤や、褥瘡のタイプ別の軟膏、被覆材も紹介、それぞれ使い方を指導した。

栄養評価の講習では、低栄養が褥瘡の重大なリスク因子であり、かつ治癒の阻害要因でもあることから、糖質、脂質、タンパク質、ミネラル、ビタミン類の五大栄養素の役割や、一般高齢者と褥瘡患者さんに必要な栄養量など学んだ。創傷のある患者さんは治癒のため、よりエネルギーが必要で、通常の高齢者より少し多めの栄養を摂るべきとの指摘に、参加者は真剣な表情で必要栄養量の計算式をメモしていた。

ただ、過剰栄養も弊害になるほか、基礎疾患によっては特定の栄養素を制限しなくてはならないこともあり、「必要栄養量を計算する際は、事前にその方の状態を医師に確認してください」と注意喚起。

また、栄養状態の指標として有名な総タンパク質(TP)、アルブミン値(Alb)以外に、トランスサイレチン(RTP)、総コレステロール(T―Cho)、総リンパ球数(TLC)、コリンエステラーゼ(ChE)が低値だと低栄養の疑いがあるため、注意すべきとアドバイスした。

服を着たままでも簡易体圧計を用いて体圧を測定することが可能 服を着たままでも簡易体圧計を用いて体圧を測定することが可能
中務看護師らは、まず簡易体圧計を用いた圧力測定の方法を指南。「体圧がよくかかる臀部(でんぶ)やかかとも、せめて体圧40mHg以下の圧力を目指していただければと思います」とし、例として実際に体圧分散させずに寝たスタッフの体圧を測定。

かかとが43.5mHg、臀部が54mHg、側臥位(そくがい)(横向きで寝た時)の大転子(足の付け根の骨突出部)が75.2mHg という結果で、その後、背抜き(体圧が一点にかからないよう分散させる行為)すると、すべての値が大きく低減、体圧分散の重要性を示した。

オムツの当て方講座では「下着のように、しっかりフィットさせることが大切」とし、「オムツのなかにパッドを重ねるとフィット感がなくなり、かえって漏れの原因になって、尿が当たって弱った皮膚の褥瘡を招きます」と中務看護師は強調した。

リハビリスタッフらは2班に分かれ、ベッド上と車いすでの座位のポジショニング、移乗法など紹介した。寝たきりの方の食事介助時、リクライニングベッドの背の角度を上げる前に、身体がずれないよう膝をまず曲げるように指導。また、座位姿勢を取った時と、食事後、ベッドのリクライニングを元に戻す時は必ず背抜きするよう求めた。

自力で身体を動かすことができない方には座位姿勢の際も背抜きが大切 自力で身体を動かすことができない方には座位姿勢の際も背抜きが大切
車いすで座位姿勢を取る際も背抜きは必須。実際に体験した参加者は、「背抜きされた時とされる前では圧迫感が全然違います」と背抜きの重要性を実感した様子だった。

同フォーラムは企業展示ブースも設けたが、「ケア用品を紹介する際などにCOI(利益相反)による偏りが出ないよう、企業から協賛金は一切いただいていません」(中西部長)。

参加者らは休憩時間に、中西部長らが推奨する耐圧分散マットや栄養補助食品を確かめにブースを訪れ、説明に熱心に耳を傾けていた。

会の最後に、最初に実施したテスト結果を発表、優秀者を表彰した。中西部長は地域に褥瘡ケアの方法を広めるため、今後もフォーラムを開催していく考えだ。

褥瘡、いわゆる床ずれは長期臥床(がしょう)(寝たきり)などにより身体の一部位に圧力が持続的にかかり、血流が滞ることで組織が壊死(えし)する状態。全身の血液の循環状態が良ければ治癒は難しくない。しかし血行が悪かったり、低栄養だったり、皮膚組織が弱っていたりすると治療に難渋し、時に褥瘡が深部まで進んで感染症を併発、生命に危険が及ぶケースもある。
 

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